その134 素朴な疑問?への井蛙の見解

 ある地方剣連の月刊誌のコラムに次の趣旨の「素朴な疑問?」が掲載されていました。

<疑問>
 剣道の構えはどうして右手が前しかないのか。
 他のスポーツ、野球にしても卓球、ゴルフ等々はたまたフェンシングも全て右 ・左の
利き手で打ったり投げたりする。
 相撲でも右・左四つと得意な利き手があるが剣道ではそうではないのは何故か。

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 この疑問について同コラム次号で、決して学術的なものではありませんが、井蛙見を
申し述べさせていただきました。

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<井蛙>
 たしかに、そのとおりです。
 ご存じのとおり、わが国は昔も今も同調圧力の強いお国柄です。
 少数意見を持つ人が多数意見に合わせるよう暗黙のうちに強制することが多いです。
 それと同じで、左前の構えの相手と対するとやりにくい、ということだけでなく、
同調圧力が働き排斥されたのでしょう。
 その根本が、我が国は「和を以て尊しとする」が人心の根幹にあるというのも
大きいでしょう。
 それと、現在ではそのようなことはありませんが、昔(数十年前まで)左利き
は卑語「ぎっちょ」と呼ばれ、幼少期のうちに右利きへ矯正されました。
 また、侍は刀を左腰に差していました。これは右手前の剣術が前提です。
 もし右腰に刀を差す侍がいれば、往来時に鞘と鞘が当たってしまい混乱をきた
します。
 また「左手前で構えた相手と試合したことがあり、とても難しかった」とありました。
 これは、刀を交えたとき表交差が普通ですが、構えに左右の違いがあれば、こ
ちらの表は相手側の裏、こちらの裏は相手側の表となり、表裏の攻防がかなりや
やこしくなります。
 多分、剣先の表裏争いが主となり、「交剣知愛」のような哲学的人間学にまで
昇華しないと思われます。
 意外と同調圧力が少ない諸外国の剣士からそのような疑問を呈する人がいない
のが不思議ですが、結局は双方右手前の構えでやる方が、剣道の面白みが味わえ
るのだと思うしだいです。

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 疑問を呈された方は、この回答に納得されたご様子でした。
 伝統文化というものは良くも悪くもカタチを継承していくものなのですね。
 ご参考まで。
頓真

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